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知っておくべきポイント!クリニック設計・施工の「法規制」と「発注方法」

TSDコラム

COLUMN
2022.07.13
知っておくべきポイント!クリニック設計・施工の「法規制」と「発注方法」

今回は、クリニックの設計・施工に関わる建築士法や建築基準法、建設業法等の法律と、現在の建設・内装業界に関してお伝えします。

 

◎クリニックの設計・施工に関連する法規制とは

クリニックの設計・施工に関わる法律で、開業計画にもっとも大きく影響するのは、有床診療所か無床診療所か(=入院施設の有無)という点です。

建築基準法上、20床以上が病院と規定され、それ以下は診療所扱いですが、19床以下でも建築物としての分類は「特殊建築物」と規定され、避難や内装制限等の規制が無床診療所に比較し格段に厳しくなります。
また、建築基準法の他にバリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)や地方公共団体条例の規制があります。たとえば東京都では、無床でも500㎡を超えると「建築物バリアフリー条例」の対象となり、500㎡未満は「福祉のまちづくり条例」の義務規定と、定められる規定が変わってきます。これはクリニックを新築するだけでなく、テナントでビル内にクリニック(診療所)を作る場合にも該当します。
このようにクリニック(診療所)を作る場合、建築基準法や各種条例での規制があり、煩雑な手続きが必要です。

こういった問題を解決するために、私達のような建築士やデザイナーが必要となるわけです。建築士法には建築士の基準についても規定されており、ビル内のクリニックでも延べ面積が100㎡を超えれば(木造の建物の場合は300㎡)、1級または2級建築士の資格が必要となります。
また施工面に関していえば、建設業法上の規定により発注者から直接工事を請け負い、協力業者・下請け業者への発注額が4,000万円以上の場合(内装工事の場合)、当該工事現場に専任の監理技術者を配置しなければいけません。この監理技術者には一級建築士もしくは一級建築施工管理技士の資格が必要とされています。
現在、2020年の東京オリンピックや東北の復興関連工事により監理技術者の数が足りず、多くの建設会社で有資格者の確保が厳しくなってきています。そもそも一級建築士は、資格制度発足以来36万人以上の有資格者がいるのですが、60歳以下は20万人以下、50歳以下では10万人程度だといわれています。有資格者が高齢化しているうえに、資格試験が難しく一年で4,000人弱しか合格しないため、建築業界は悪循環に陥っているのです。

 

◎発注方法の違いによるメリット・デメリットとは

このような状況下で開業をお考えの場合、どのように設計・施工の発注を行ったらいいでしょうか。ビル内クリニックの内装工事、戸建ての建築工事に関わらず、一つは設計を設計事務所やデザイン事務所に依頼し、施工は建設会社に見積依頼をする方法、もう一つは設計・施工ともに信頼のおける会社に発注する方法です。
もちろん両方にメリット・デメリットがあります。設計・施工を分離し別々の会社に依頼する方法では、設計図面をもとに複数の施工会社に見積依頼ができ、工事価格を比較できる点がメリットとなります。反面、ビル内のクリニックのように契約時からテナント家賃が発生するような場合は、設計・施工同一業者発注より時間がかかるため、その分の家賃等の費用を見込んでおく必要があります。また、工事途中での変更が発生する場合、レスポンスの遅れ等の問題が発生する可能性があります。
また一方の設計・施工を同一業者発注に関していえば、工事価格の比較という点では設計・施工分離方法より、客観性が下がりますが、時間的な問題や様々なレスポンスに関してはメリットがあります。(もちろん戸建ての建築工事でも同じことがいえます)
両者の方法とも信頼できる企業であることと、先に書いたように現行の建築関連の各法律や、医療機器等に明るいことが重要なのはいうまでもありません。

開業時にどの業者に設計や施工を依頼するかは悩ましい問題ではありますが、現在の建築内装業界の現状や、デザイン力、施工事例、アフターメンテナンス等の実績を考慮しながら検討し、決定していく以外に方法はありません。

 

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