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クリニックのインテリアデザインに求められること

TSDコラム

COLUMN
2022.06.20
クリニックのインテリアデザインに求められること

今回は、クリニック(診療室)のインテリアデザインについてお話します。
クリニックに限らず、人間が日常的に使う空間は、機能と機能以外の感覚的な面の両方で、直接に利用者に影響を及ぼします。

 

まずは機能的な面からお話しします。
通常の住宅や事務所でも、照明や空調のスイッチが不便な位置にあると使いにくく、利用者にストレスや余計な身動きを生じさせますよね。医療空間では、機能の問題はより重要です。例えば手術室照明の術者足元フットスイッチがなく、壁面スイッチだけだとしたら、照明のONOFFを術者がいちいち指示しなければなりませんし、時間的にもロスが出ます。

 

このような機能上の留意点は、手術室だけではなく、クリニックのインテリア全般において数多くあります。この留意点を、診療方法・患者さんの使い勝手・スタッフの運営方法といったさまざまな角度から明確にし、空間的に解決していくことがクリニックデザインのポイントであるといえます。

 

感覚的な面では「隠れた次元」がポイントになります。
例えば、出血時に壁の色が血液色の補色関係にある色(薄いグリーン等)でなかったら、残像が壁に残って気になってしまいます。あるいは、クリニック内でどんなに清潔な運営管理を行っていても、収納方法や空間デザインよっては清潔感を感じにくくなります。このように、空間には「隠れた次元」が存在するのです。

 

昨今よく聞く「癒しの環境」(Healing Environmemt)とは、空間における機能上のポイントだけでなく、この「隠れた次元」を空間デザインとして捉え、「人にやさしい空間をどのように作り上げていくか」であると、私は考えています。

さらに、空間が人間に与える要素はそれだけではなく、空間の持つ全体的な「意味」にも注目したいと思います。
「その空間が運営効率志向で計画されているのか?」
「人に対するやさしさを志向して計画されているのか?」
設計時のコンセプトが、長期にわたって空間利用者にはっきりと伝わっていくことが大切です。

クリニックは、広くはない面積に多機能な医療機器と多くの人が入り込む空間です。しっかりと練られた平面計画がないと機能不全に陥りやすいですし、竣工後に様々な不具合によって使い勝手に問題が出てきます。そのため、建築の平面計画としては難しいジャンルのひとつです。

では最後に、クリニックのインテリアデザインとして、私が思う優れた診察室のレイアウトについて提案してみたいと思います。

クリニックは、ドクターがおひとりで開業されるケースが多く、何科であれ診察室が1部屋というレイアウトが大半です。しかし私は、ドクターひとりが診察室を2部屋を使った治療は、患者さん側にも、クリニック側にも利点があると考えています。
ひとつは感染症患者の隔離室兼診察室としての利用。あるいは患者さんに2診察室に同時に入ってもらい、1室は看護士さんに問診表を記入してもらったり、先に血圧や体温を測っておいてもらい、診察の終わったドクターが移動して診察を行います。
これを交互に繰り返した診療は、合理的で診療時間の短縮にも繋がりますし、診察室近辺に処置室を配置しておけば、3室での運用によって診療行為のさらなる合理的運用ができるのではないでしょうか。

看護士から患者さんに「○○医師が参りますから、少しお待ちください」と伝え、隣の診察室からドクターが移動してくるというのは、診療としてはCOOLで洗練されていますし、ハンディのある高齢者が待っている他の患者さんに気を遣うこともなく、やさしい空間になると思います。

[診療室を2室にした場合の間取り例]